「ねぇ、ルディーン。よく解んないけど、薬草も探せるようんあったの?」
「うん。そうみたい」
僕とお母さんとのお話を聞いて、キャリーナ姉ちゃんは魔法で薬草が探せるようになったのが解ったみたい。
だからね、それなら早く果物を探してよって言うんだ。
「うん、それじゃあやってみるね」
って事で、さっそく果物はどこにあるかなぁって思いながら探索魔法を使ってみたんだけど、
「あれ? 解んないや。おかしいなぁ」
さっきので植物も探せるようになったはずなのに、何でか知らないけど全然見つけられなかったんだよね。
「どうしたの? 見つかんない?」
「うん。もしかして、この近くには無いのかなぁ?」
さっきお父さんは、ここまでくれば果物を採りに来る人はいないはずだよって言ってたよね?
でも、もしかしたらポイズンフロッグが居なくなったことを聞いて、このへんまで来てるのかも? って思ったんだ。
だからそうキャリーナ姉ちゃんに言ったんだけど、そしたらお父さんはそれは無いよって。
「ここまでくればポイズンフロッグだけじゃなく、ジャイアントラッドとかも出る可能性があるからな。ルディーンも覚えてるだろ? 初めてこの森に来た時の事を」
「そう言えばおじさんが追っかけられてたね」
「ああ。あの時はたまたま森の入口辺りまで来ていたジャイアントラッドだったから助かったが、こんな奥でもし出くわしていたら、入口まで逃げるなんて多分できない。だからこそ、そんなのに会う危険を冒してまでGランクの連中がここまで来る事は無いんだ」
採取専門の冒険者さんたちはね、戦う事ができないから弱い魔物だけじゃなくってちょっとした野生の動物相手でも簡単に殺されちゃうんだって。
だからそう言う危険なのに合う可能性があるとこまでは絶対に入って行かないんだってさ。
でもさ、だったらなんで果物が探索魔法に引っかからなかったんだろう?
さっきはちゃんと、薬草がどこにあるのか解ったのになぁって思った僕は、腕を組みながら頭をこてんって倒したんだ。
「なるほど。そう言う事ね。みんな、森の入口に戻るわよ」
そうやって僕がなんでだろうって考えてたら、その間にお母さんがなんかに気が付いたみたいで、急に森を出るって言いだしたんだよね。
でも、それを聞いたキャリーナ姉ちゃっは怒っちゃったんだ。
「え〜、まだ甘いの、とってないよ? なのに何で?」
「そうよ、お母さん。入口の辺りにはないってお父さんも言ってたじゃない」
それにね、レーア姉ちゃんも一緒になって怒りだしたもんだから、お母さんは慌ててなんで戻るのかを僕たちに教えてくれたんだ。
「さっき、ルディーンは薬草を見てそれを探したでしょ? そしたら魔法が成功したんだから、もしかしたら同じように果物を見ながら魔法を使えばいいんじゃないかしら? って私は思ったのよ」
「そっか! もしかしたらそうかもしんない」
魔物や動物と違って、植物は普通のやり方じゃ探索魔法に引っかからなかったもん。
だからもしかすると、お母さんの言う通り探すものを実際に見てこれを探すんだって思わないと見つかんないのかもしれない。
「でしょ? だから一度戻らないといけないのよ」
「でもでも、今から街に戻ってたら、ルディーンが甘いのを見つけられるようになってもとる時間がなくなっちゃうよ?」
「ええ、確かにイーノックカウまで戻ったらそうでしょうね。でもね、だからこそ、森の入口まで戻るのよ」
キャリーナ姉ちゃんはこんなとこから帰るとすっごく時間がかかっちゃうから、自分たちで探した方がいいよって思ったみたい。
でもね、お母さんは入り口に戻った方が絶対いいよって言うんだ。
なんでかって言うと、そこに行けば絶対果物が手に入るからなんだってさ。
「なるほど。露店に売ってる果物を買うんだな?」
「そうよ、ハンス。あそこに行けばこの森で取れた果物を売っているはずだもの。それにもしルディーンの魔法が考えている通りのものだったら、そこでほしい物を手に入れればピンポイントで探すことができるでしょ?」
そう言えば森の入口には露店街があったっけ。
お母さんが言うにはね、あそこには商業ギルドの天幕で冒険者さんたちから買い取った薬草や果物とかも売ってるんだって。
だからそこでほしい果物を買ってからそれを持ってもういっぺんここに戻って来れば、欲しいのが簡単に手に入るんじゃないの? って言うんだよね。
それを聞いたお姉ちゃんたちは大喜び。
特にキャリーナ姉ちゃんなんかは、早く帰りたいからって僕の手を持って引っ張ったんだよ。
「キャリーナ、ルディーンの手をそんなに引っ張ったら!」
「わぁ!」
でも僕、キャリーナ姉ちゃんよりすっと小さいでしょ?
そんなお姉ちゃんに急に手を引っ張られたもんだから、そのまんまひっくり返っちゃったんだ。
「ぐすん。お姉ちゃんが、お姉ちゃんが引っ張ったぁ。わぁ〜ん!」
「あらあら、大変。大丈夫? ルディーン」
でね、全然そんな事になるなんて思ってなかったから、僕はびっくりして泣いちゃったんだよね。
と言うわけで、僕が泣き止むまで森の入口には迎えなかったんだ。
「ごめんね、ルディーン。いたかった?」
「大丈夫だよ、キャリーナ姉ちゃん。ちょっとびっくりしちゃっただけだもん」
お姉ちゃんが意地悪して僕を転ばそうとしたわけじゃないのは僕も解ってるんだよ。
だからすぐに仲直りして、今はみんなで森の入口にある露店を見て回ってるんだ。
「う〜ん、無いわねぇ」
でもね、さっきからいろんな果物や木の実が売ってるのに、お母さんはそれを買おうとしないんだよね。
だから何で? って聞いてみたんだけど、そしたら欲しいのが見つかんないんだって。
「お母さん、何探してるの?」
「アカオウの実よ。この時期なら取れるはずなんだけど」
お母さんが言うにはね、その実は食べるととっても甘いお汁が口中に広がって、すっごくおいしいんだって。
でもとっても傷みやすいから、この時期にイーノックカウに来ないとなかなか食べられないんだってさ。
「でも、本当にないわねぇ。ちょっと聞いてみようかしら」
だからさっきから一生懸命探してたんだけど、全然見つかんないんだよね。
と言うわけで、お母さんは近くで果物を売ってる露店のおじさんに、どっかに売ってないの? って聞いてみたんだよね。
そしたら、こんなとこで売ってるはず無いよって。
「ああ。あれは積み上げたら下の方のがすぐにダメになるだろ? だからこんな露店では売れないんだ」
「そうなのですか」
それを聞いたお母さんは、しょんぼりしちゃった。
だからね、僕は露店のおじさんにどこでなら売ってるの? って聞いたんだよ。
だってここに売って無くっても、売ってるとこを聞いとけばイーノックカウに帰ってから買いに行けばいいもんね。
「ああ、それなら商業ギルドの天幕に行くといいよ。あそこになら持ち込まれたアカオウの実があるだろうから、頼めば売ってくれるはずだ」
「そうなの!?」
ところが、おじさんが近くにある商業ギルドの天幕に行けば帰るよって教えてくれたもんだから、僕もお母さんもびっくり。
でもそのおかげで、僕たちは無事、アカオウの実を手に入れる事ができたんだ。
実を言うと、イーノックカウの森の中にはこのアカオウの実じゃなくてもとても美味しい果物がいっぱいあります。
なにせ、ほぼすべての果物が魔力を含んでいるんですからね。
ただ、シーラお母さんがそれに執着してるだけだったりw
前に魔物の内臓の話でも書きましたが、魔力を含んだ食べ物は体にいい影響を与えるので、普通のものよりおいしく感じます。
まぁ果物の場合は、魔物の肉や内臓ほど魔力を含んでいるわけではないので、ただ、おいしく感じるだけなんですけどね。